(FAQ26)
ヴァイキングの末裔達
鮭・鱒をターゲットにしたトローリングやボート釣りは、プレジャーボートの保有隻数、
湖沼面積の大きさや湖の数の多さ、対象魚が豊富さから、海外では北米がもっとも
賑わっていると思われますが、ヨーロッパでもトローリングや船釣りが盛んな地域があるようです。
たとえばABUの故郷であるスウェーデンなどのスカンジナビア諸国も、
人口当たりプレジャーボート保有隻数率がかなり高く、結構な数の釣り人が楽しんでいるようです。
これらの地域の人々は、いわばヴァイキングの子孫達で、幼少の頃から生活に密着して船遊びに親しむ
「ボートライフ」ともいえる風習があるようです。
また、我々日本人から見ると彼らは体質的に(皮下脂肪が厚い)寒さに異常なほど強く、
極端な話、一般的な日本人が防寒着を着込むような気温でも、
半袖シャツに短パン姿の軽装で平然とハーバーをうろついていたりします。
余談ですが、これらの国々はボート釣りに限らず、オリンピックのボートの競技(ヨットや漕艇など)では、
寒冷地にもかかわらず競技人口も多く操船技術は世界最高峰のレベルにあり、ゴールドメダリストを輩出しています。
写真はデンマークのトローリングボートで、ダウンリガーで海では鱈や鮭、湖ではパイクや鱒を釣っているとのことです。
どことなく船の形がヨーロッパ風な印象を受けます。
なお、アメリカでトローリングが盛んなミシガン・ミネソタ州も、
冬の気候が「米国の冷蔵庫」と呼ばれるほど厳しいようです。
両州は気候が似ていることから北欧系の移民が数多く入植し、開発してきた経緯があります。
これらの地域でトローリングやボート遊びが盛んなのは、先祖から彼らに受け継がれた血筋のせいかもしれません。
スピード&テンパーチャーユニット(対流速度&水温計)1
北米のレイクトローリングでは、大型ボートでオープンウォーターレイクトローリングを行う場合、
ダウンリガーのオプション機能として、対流速度&水温計センサーをボール付近に設置し、
ボートスピードのコントロール、及びタナの選択の目安として使用するのが近年の流行であることは
すでにご報告した通りです。
現在使われている主な機種は、FISHHAWK840、SUB-TROLL900、そしてキャノン製SNT、
そしてkelllabo製のDepthRaiderの4機種で、この中から選択しているようです。
比較的新しい型であるキャノン
SNTは、速度・水温のみならず、これに加えてボール付近の水中の
明るさ(光度)、そしてボールがブローバックしていても、深度計測機能も備えているためリグの
沈降深度がリアルタイムで計測できるようです。
そのかわり、他のセンサーユニットより価格設定は高めです。
これらの計測器を用いて湖上で対流速度を測ると、例えば表層をGPS換算で対地速度5kmでボートが
進行していても、ルアー泳層のタナでは対流速度ベースで2kmしかない(逆もある)、
湖流や風による「二枚潮」の状態が頻繁に発生しているそうです。
彼らはこのような自然現象を機械による数字=定量で把握しているため、
故にデッドスローからハイスピードまで広い範囲のスピードで泳ぐ、
スプーンやドジャー、フラッシャーのスピード耐性が重要視される一因となったようです。
ディスプレイの表示は、上から深度(単位:フィート)、タナの水温(華氏)、タナの対流速度(マイル)、
光度、バッテリーボルテージの順。本場の最新艤装品は「デジタルトローリング」の極み。
スピード&テンパーチャーユニット(対流速度&水温計)2
外国製の電子機器を日本で購入・設置する場合には、気を付けなければならない事もあるようです。
それは商品不良や故障が機種によって起こり得ることです。
たとえば、日本のトローラーの間でお馴染みの温度計、IM-40Tを使ったトローラーの方ならお分かりの通り、
外国製の電子機械は信頼性が?のものがあります。
一方で、EAGLE製魚探のように故障や不良の噂をあまり聞いたことがない商品もあり、逆に日本の代理店の
レーゾンデートル(存在理由)がよく分からないものもありますが。
米国国内間で取引する場合は、メーカー保証、返品返金、無料交換/修理ともいずれも販売店経由で
メーカーが受付してくれるケースが多いようですが、これらの機器は日本には正規代理店が無いため、
個人輸入した場合、商品クレームはやり取りも面倒くさく、送料の関係上、
無償でのトラブル解決が難しい事もあるようです。
ちなみにあくまで散見するかぎりで責任は負いかねますが、米国トローラーの間の噂では、
SUB-TROLL900がもっとも故障しづらいと言われているようです。
また、DepthRaiderは探査ユニットが小さいのでブローバックが少なくてすみ、
かつ気密性の高い2重Oリングを使用するなど、故障しにくい作りになっているようです。
写真はキャノンSNTで専用ケーブルのビニールコーティングが弱く、剥がれてしまった例
初期不良は他にも起きており、購入するなら製品の完成度が高まってからの方がいいかもしれない。
米国・カナダのトローリング専用スプーンの設計思想
FAQ10でご紹介しましたように、北米5大湖の回遊魚(キング、シルバーサーモン)狙いの
オープンウォータートローリングでは、トローリング専用のスプーンが主力のベイトとなっているようです。
プラスチック製プラグやトローリング専用フライ、カットベイトやフォールベイトも勿論使用しているようですが、
プラグよりもコストパフォーマンスに優れ、フライと比較して自力でアクションし、餌よりも手軽に仕掛けをセッティングでき、
そして高額な賞金を賭けたサーモンダービーでの実績が高い故スプーン使用率が高くなるのは合理的な帰結と言えるでしょう。
ところで、一般に、トローリング専用のルアーは、通常のキャスティング用ルアーと比較すれば、
キャスタビリティ(遠投性能)と沈降性能を無視できる為、
設計の自由度はキャスティング用ルアーを大きく上回ります。
現代の北米トローリング専用スプーンの設計思想は、
①Light
Weight
②Narrow shape
③Shallow cupの三点に集約されるようです。
①の適度な軽量は、低速トロール時の立ち上がりを早くし、②の細身の形状、及び③の浅いカップで高速引きにおいて極端な揚力の発生を抑え、
幅広いスピード耐性を得られる適度なアンバランスを得る、というのがカスタムスプーンビルダーの基本的な考え方のようです。
現代の北米トローリングスプーンの設計思想の基礎を築いたウォルバリンタックル社シルバーストリーク(通称SS)スプーン。
1984年発売で五大湖界隈で早くからダウンリガーによるディープフィッシング用に純銀プレートを採用した。新興メーカーが次々と現れ、厳しい競争が繰り広げられる中、
現在もウルトラグローパターンやEchipテクノロジー搭載で新たな進化を続ける。
ビルダー/アーキテクチャーのチャック・カートライト氏はトーナメントウイナーとしても有名、デザイナーとしてエッピンガー社(ダーデブル)から身を興して独立、氏の提唱する
スロー引きでもウォブリングし、ハイスピードでも回転せず忠実にSide to sideのウォブリングアクションを実現する、
という現代トローリングスプーンの設計思想は当時の常識を覆すものだった。
米国・カナダのトローリング専用スプーンのコードネーム
北米トローリング専用スプーンのもう一つの特徴として、優秀なアクションをする人気スプーンには、
豊富なカラーパターンがあることはFAQ10でご紹介しました。
日本のレイクトローリングでは、貸しボートで2本出しというのが一般的なため、なかなかルアーやフラッシャー、
ドジャーの色の差を実戦で検証することは難しいのですが、大海のような巨大な五大湖においてビッグボートで時に
16本出しを行う北米トローラー達は、同じメーカーの同じ番手のトローリング専用スプーンやアトラクターを微妙な色違いで
同時に多数で使用することが可能であり、
且つ強力なVHFをボートに搭載し他船と情報交換しているため、ルアーの微妙な配色の差が釣果を大きく左右する事を実感し、
その日のコンディションで最善のヒットパターンは何か?ということを把握出来る場合もあるようです。
下図の写真のように、色の配色について、フライのパターンのような{コードネーム=愛称}がそれぞれついています。
各カスタムスプーンビルダー共通の有名なコードネーム=パターンとしては、早期のDouble
orange crush、濁りにはWater melon seed、
その他にDolphinパターンと呼ばれるシール貼りや、ボーン(骨)パターンなどがあり、
最近ではダウンリガーによるディープフィッシング用に蓄光系(グロー)が加わります。
これらのカラーパターン=コードネームは年々新色が発売され、現在では300以上のパターンを持つ人気スプーンがあるようで、
魚の学習効果に対抗してトーナメントで優勝を目指すトローラー達は新たなヒットパターンの開発に余念がないようです。
写真は北米オンタリオ湖のトローラーのタックルボックス。クリアケースに各パターン毎に分類して収納している。
日本人と白人では色彩感覚に差があることがよく分かる。アクションの良い定番人工擬似餌を大量生産=安価で設定して使用し、
魚のスレには常に新たな配色で対抗する、というのが北米トーナメントトローラーの合理的な戦術。
ミニマムスプーンの威力
ディックナイトやラッキーナイトに代表される2~3センチの非常に小さなトローリング専用のスプーンがある。
これらのスプーンは、「小さな巨人」や「レコードキャッチャー」と呼ばれ、その通り記録的な大物をヒットさせてきた。
ではなぜ、このようなミニマムスプーンが大きな威力を発揮するのか?
それは、小ささに起因する違和感のなさに加え、小さい故の小刻みで激しいウォブリングや、ドジャーとの併用による不規則な
動きにあるようである。
これらの小さなメタルスプーンに対し、シェルスプーンでは、素材的に違和感がない分だけ、4~5センチと一回りサイズアップ
することができ、スレにくさや、小刻みな激しいウォブリング、ドジャーとの併用による不規則な動きなどに加えて、
適度に目立たせることによりさらに中型スプーンとしても活用することができる。
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