(FAQ219)
猪苗代湖の大岩魚

猪苗代湖から大岩魚のお便りをいただきました。
レイクトローリングロッド I'zShellCraft The FIRST で釣っていただいた大岩魚のレポートを転載させていただきます。

待ちに待ったその瞬間はいつも唐突にやってくる。そしてぼくはその瞬間がたまらなく好きだ。だからこそこうして26年もの間、飽きもせずにレイクトローリングが続けられたのだと思う。
前アタリは意外に小さかった。魚がそおっとルアーをくわえたのか、それともくわえた魚の個体が小さいかのどっちかだ。
穂先が柔らかく繊細なこのロッドは、ルアーをくわえた魚に違和感を覚えさせない。今日の釣りは深場勝負になると予想して選んだロッドは「I’z Shell Craft」さんの「The FIRST」。
そして次の瞬間大きく竿が絞り込まれる。ぼくは小さく「ヒット!」、と、ひとりごちに叫んでアクセルで合わせを入れた。そして少しきつめにドラグを設定しているためか、クリック音が湖に響くことはなかった。
それでもヒットした魚は、たぶん50cmを超えるのは経験上間違いなさそうだ。

船を沖に向け... とは言ってもここ猪苗代湖は日本で4番目に広い湖。一瞬でどっちが沖なのか判断できないくらいとにかく広い。
魚探を見て水深の深いほうへ船首を向けるが、そう簡単に深場に移動できないのがこの湖のつらいところだ。船をゆっくり走らせたまま、ロッドホルダーから竿を引き抜きファイト開始。
しかし... リールが巻けない。
正確に言うとドラグがすべって、ハンドルを回せどもラインを回収できない。10秒... 20秒.... 静かな対峙が続く。アタリはまぎれもなく魚のものだったが竿を持つ手には魚信をほとんど感じない。
まるでぼろぼろのビニール袋が引っ掛かった時のようだ。もしかしてこれ魚じゃないかも? ぼくは不安になった。

ROD:I’z Shell Craft The FIRST REEL:ABU 7000C LINE:CABELAS 18lb

不安になったぼくは思わずドラグを絞め込もうとして思いとどまった。今日1年振りに使っているリールは26年前、レイクトローリングを始めた時に買った年季ものの深場専用リール、ABU社の7000C。
このリールはシンクロドラグ機能(ハンドルを逆回転させることでドラグを緩める機能)はない。
もし途中で魚に走られたとき、ドラグがキツすぎると2号のフロロカーボンが悲鳴を上げてライン切れを起こすリスクが非常に大きくなる。
ドラグを締め込むことが無理なら船を止めてファイトするか? それも一瞬頭をよぎったが万が一魚にこっちに向かって走られたとき、絶対不利になる。ここはつらくても「ガマン」、するしかない。

おそらくリールが巻けるようになったのは、竿を持ってから30秒も経過した頃だろうか... 相変わらず魚信らしい魚信を手元に感じないものの、少しずつラインはたぐり寄せることができるようになった。
ヒットしただろう魚ははるか90yd以上先にいる。
あせってもしょうがない。ここは持久戦の覚悟を決める。そして10ydほどラインを回収したとき強烈な反転。一気に2、30ydほど走られる。これは間違いなく魚だ。
しかも絶対「コイ」、じゃないし「サクラマス」、とも違う。おそらく「岩魚」、だ! しかし過去に経験したことのないほどの強烈な引きにも強靱なバッドのおかげで全く不安を感じない。
去年から使い出したこの竿で、何本もの50cmオーバーを仕留めてきたが、少しバットが硬すぎるという思いが強かった。しかし今日はこの強靱なバットがとても頼もしく感じる。

その時リールに残るのはバッキングラインの30ydのみ。まずい... 全部ラインを引きずり出されたら為す術はない。緊張が走る。不安と戦いながら少しずつラインを回収する。
次の瞬間竿先が「フッ」、と軽くなる。30ydほど全速でリールを一気巻き。ヤバイ、バレたか? しばらくしてもとの重量を感じることができた。
よかった、まだ魚は針に掛かったままだ。船を止めてファイトしなくて正解。今度はまたしても反転。強烈なファイトでリールを巻くのをやめ、ロッドさばきで何度も対処。
絶妙なロッドバランスで全く不安を感じない。左右に魚が走るたびに片手で舵を操作して、船がファイトの障害にならないよう船の向きを修正する。
時折響くクリック音。「う~ん、超気持ちイイ!」。この状況を意外にも楽しんでいる冷静な自分に少し驚く。そんなことをおそらく5、6分も繰り返しただろうか...


もう少しでモノフィラのリーダーだ。魚との距離は10m強。本当の勝負はここからだ。ここから魚をバラす危険が一気に高まり、釣り師の腕がもっとも試される場面だ。
案の定リーダーが竿の半分程度にさしかかった時、一気に走られる。10yd以上走られただろうか...
今日はこんなことへの対策としてレッドコアとリーダーの接続にひと工夫してきている。おかげでほとんど抵抗なく接続部分はガイドを通り抜けていく。
そのひと手間が面倒くさくて妥協しそうになったが、前日早起きしてやっておいて正解だった。そしてあいつはまだまだ弱ってなんかいない。
救いは4半世紀前のロートル7000Cが、日頃のメンテナンスの甲斐あってか、相変わらずドラグの滑り出しが滑らかだったことである。

船縁の最も危険なファイトももうすぐ最終章。推定水深2mで魚がヒラを打つ。黄金の魚体が薄曇りの柔らかくな日差しを「ギラリ」、と跳ね返す。
「大岩魚だッ!」。さすがに我を忘れた一瞬である。感動! そしてファイナルステージ。もっとも危険で緊張する瞬間。それはランディング。
今日ボクは持っているなかで一番信頼しているランディングネット「サーモンネット」、を持ってきている。ネットはもちろん大きさが重要だが、それ以上に操作性が大事である。
そういう意味でもっとも信頼しているネットだ。いかんせん持ち運びが不便で最近出番がほとんどなかったが、ここ一番の勝負にはコイツしかいない。

そして力強いバットで岩魚を引き寄せ、1発でランディング成功。ファイトに夢中でどれくらいの時が流れたのか... 時間の感覚は全くない。とにかく戦いは終わった。
今ネットに入っているのは目測62、3cm、ナイスバディのオスの大岩魚。すぐにショックリーダーを切り、改めてサイズを測ってみると、尾びれを大きく開いた状態で68.7cm。
閉じると69.5cm。
ヒットルアーは、ぼくがフィールドテスターをつとめるエムズ・ルアー10cm。石脇さん、I’z Shell Craftのルアーじゃなくてゴメンね!(笑)。
で、もちろんこんなトロフィーサイズは人生初。すばらしいルアーとロッドとリールに支えられ人生最高のトロフィーを手にすることができました。
応援していただいたみなさま、ありがとう!

人生、何事もあきらめないで続けることが大事ですね、そう感じた一瞬でした。次の目標は「ナナマル超え」、ですね。
さて... 生きてるうちに実現するんだべか...(笑)。

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